相続法改正の影響① ~配偶者居住権・配偶者短期居住権~/八木貴弘司法書士事務所(神奈川県相模原市/緑区)

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相続法改正の影響① ~配偶者居住権・配偶者短期居住権~
2018/11/02

こんにちは。司法書士の八木貴弘です。

 

 

平成30年7月6日、民法及び家事手続事件法の一部を改正する法律が成立しました。

(同年7月13日公布)

相続法分野の大幅改正は昭和55年以来、約40年ぶりの大幅な見直しになります。

 

今般の相続法改正は、核家族化などの家族の概念の変化、少子高齢社会、情報技術の発展などの社会情勢を踏まえて、

 

(1)残された配偶者の保護

(2)遺産分割の在り方の見直し

(3)遺言制度の見直し

(4)遺留分減殺制度の見直し

(5)相続の効力等に関する見直し

(6)相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

といったものが盛り込まれました。

 

参考URL :http://www.moj.go.jp/content/001263586.pdf

 

今回は、(1)残された配偶者の保護の方策である「配偶者居住権」「配偶者短期居住権」について解説していきます。

※「配偶者居住権」「配偶者短期居住権」の施行日については、公布の日(平成30年7月13日)から2年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。

 

 

☆ 「配偶者居住権」とは

配偶者居住権とは、相続人である配偶者が被相続人が所有していた建物に無償で使用・収益をすることができる権利であり、以下の要件を満たすと成立します。

 

① 被相続人の配偶者が相続開始の時点で被相続人の財産に属する建物に居住していること

 

② 以下 a , b のいずれかを満たすこと

a. 遺産分割により配偶者居住権を定めること

b. 遺言・死因贈与等により配偶者居住権をさだめること

 

但し、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合には、上記の要件を満たしても配偶者居住権は成立しません。

 

 

☆ 審判で配偶者居住権を取得できることも

配偶者居住権の制度スタート後は、遺産分割協議において配偶者居住権についても話し合われることになりますが、話し合いがまとまらないこともあります。その場合には、家庭裁判所は、以下の場合に限り、配偶者に配偶者居住権を定める旨の審判をすることができます。

 

① 共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき

 

② 配偶者が配偶者居住権の取得を希望し、かつ、居住建物の所有者の受ける不利益を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために必要があると認めるとき

 

裁判所の主導により、配偶者の保護が図られる余地を残しています。

 

 

☆ 配偶者居住権の期間は?

配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間です。但し、遺産分割協議や遺言に別段の定めがある場合、又は家庭裁判所が遺産分割審判において別段の定めをした場合にはその定めに従うことになります。

 

 

☆ 居住建物の費用の負担はどうなるの?

配偶者居住権を得た配偶者は、その居住する建物の所有者との間で使用貸借契約に準じた関係が生じます。配偶者は、従前からの用法に従い、善良な管理者の注意をもって居住建物の使用をしなければならず、居住建物の通常の必要費(例えば、使用収益に必要な修繕費、公租公課等モノの維持管理に必要な費用)を負担することになります。

 

 

☆ 「配偶者短期居住権」とは

配偶者短期居住権とは、その名のとおり、配偶者の居住権を短期的に保護する制度になります。配偶者が相続開始時に被相続人の所有する建物に無償で居住していた場合には、以下の期間、居住が保護されることになります。

 

① 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をする場合

  ・・・居住建物の帰属が確定する日までの間(但し、最低6カ月間は保障)

 

② 居住建物が第三者に遺贈された場合や配偶者が相続放棄した等の場合

  ・・・居住建物の所有者から配偶者短期居住権の消滅の申入れを受けてから6か月間

 

現行の判例法理では、第三者に居住建物が遺贈されてしまった場合や被相続人が反対の意思表示をした場合に、配偶者の使用貸借が推認されずに居住が保護されないといった事態が生じ得ましたが、配偶者短期居住権により被相続人の意思にかかわらず、常に最低6か月間は、配偶者を保護することができるようになります。

 

 

 

「配偶者居住権」「配偶者短期居住権」ともに今後スタートする制度であり、運用に際してはまだまだ不確定な部分もございます。この制度についてもっと詳しく知りたい方は、弊所までお問い合わせください。

 

 

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