▼ 事業承継税制とは
事業を引き継ぐ後継者が、先代経営者から相続や贈与によって上場していない会社の株式を受け取り、その会社を経営する場合、一定の条件を満たすことで、その株式にかかる相続税・贈与税の納入を先延ばしにすることができます(「猶予」といいます)。
上記のような仕組みを「事業承継税制」といいます。
また、上記の猶予を受けた後継者が亡くなった場合や、一定期間が経過した後に、贈与により事業を引き継いだ場合には、この猶予されていた相続税または贈与税については、免除がなされます。
・猶予を受けるための条件
猶予を受けるには、一定の条件を満たす必要があるとご説明いたしました。
この一定の条件には、経営者が満たすべき要件、会社が満たすべき要件、スタートしてから5年間守るべき要件、免除になるための最後の要件があります。
(1)経営者が満たすべき要件
経営者が満たすべき要件には、先代経営者が満たす要件と後継者が満たす要件の2種類があります。
・先代経営者が満たすべき要件は
①会社の代表取締役の経験があること
②贈与・相続の直前に会社の筆頭株主であったこと
③贈与後において代表取締役ではないこと
です。
・後継者が満たすべき要件は
①贈与を受けるときに会社の代表取締役になっていること
②贈与・相続を受けることにより、会社の筆頭株主になること
です。
贈与によって事業承継税制を受ける場合には、贈与前に3年間継続してその会社の役員である必要があります。
相続の場合には、相続発生時は代表取締役ではなくても構いませんが、相続発生から5ヶ月以内に代表取締役に就任する必要があり、かつ、相続発生時には役員でなければなりません。
(2)会社が満たすべき要件
会社が満たすべき要件として、まず、当該会社が中小企業に該当する必要があります。
中小企業の定義については、中小企業省の「FAQ中小企業の定義について」を参照してください。
中小企業は、資本金か従業員数のいずれかを満たしていれば、中小企業に該当します。
従業員を減らすことは容易ではありませんが、資本金の額であれば自由に減らすことも可能です。
(3)5年間守るべき要件
5年間守るべき要件を途中で破ってしまった場合には、猶予されていた税金を納めなければなりません。
主には
①後継者が会社の代表者であり続けること
②後継者が会社の株式を保有し続けること
③会社の雇用の8割を維持すること
です。
この中でも、雇用の8割を維持するという要件が非常に厳しいものになっています。中小企業の場合には、従業員が2割減ってしまうということが十分に起きる可能性があります。
しかし、これは毎年ではなく5年間平均での判定となったことや、平成30年には「もしこの条件を満たせなくても、経営悪化等の正当な理由があれば良い」という形になったため、実質的に雇用継続要件は撤廃された形になりました。
(4)免除になるための最後の要件
5年間の事業継続が終わっても、直ちに税金が免除になるわけではありません。
5年経ったら、代表取締役を辞任しても良いですし、雇用の8割維持も意識する必要がなくなります。
最後の要件とは、後継者が次の代に事業承継をすることです。
次の代に事業承継をすることで、初めて贈与税・相続税が免除されます。
もっとも、生前贈与の場合には、再び事業承継税制を使って贈与することが条件となります。そうするとさらに次の代が生前贈与をする際に事業承継税制を使う必要が出てきます。
これはデメリットではなく、この方法を続けることで税金の免除が半永久的に続くという考え方ができます。
また、相続の場合には、事業承継税制を使用しなくとも全額免除となります。
後継者(2代目)が次の代に事業承継する前に、後継者(2代目)が死亡してしまった場合には、猶予されていた税金は全額免除になります。
ただ、この場合、1代目→2代目間の税金は免除されますが、2代目→3代目間の相続税は通常通り発生します。3代目も事業承継税制を使いたいのであれば、事業承継税制の申請を行う必要があります。
八木貴弘司法書士事務所では、相模原・町田・八王子を中心として関東全域で事業承継税制に関するご相談を承っております。事業承継の際の納税に関してお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。
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