▼賃借権設定登記
不動産の賃借権は、不動産の全部または一部の使用及び収益をする権利です。賃貸人は賃借人に対して不動産を使用及び収益をさせる義務を負い、賃借人は賃貸人に対して賃料を支払う義務を負います。
(1)賃借権の登記
賃借権は、他の登記可能な権利と異なり賃貸人が賃借権設定登記をすることを承諾しなければこれを登記することができません。賃貸人は、賃借人との間で建物賃貸借契約を締結しても、それだけでは賃借人に対して賃借権の登記をすべき義務はありません。
もっとも、建物賃貸借の場合は登記を経由しなくとも建物の引渡しを受けることにより対抗要件を具備することが認められており(借地借家法第31条1項)、賃借権に登記請求権が認められていないからといって、格別の不利益があるわけではありません。
賃貸借契約が締結されただけでは賃借権の登記請求権は認められませんが、賃貸借契約の当事者間で賃借権の登記をなす旨の特約をした場合には賃貸人には契約上の登記義務が認められます。したがって、この場合には、賃借権の設定登記手続は、登記手続の一般原則に従い、賃貸人を登記義務者、賃借人を登記権利者として、賃貸人と賃借人の共同申請により行うことになります。
(2)登記の範囲
不動産の一部についての賃借権設定登記は認められません。賃借権の登記は、1棟の建物すべてに賃借権を有しているか、あるいは賃借した建物が区分所有建物であり、区分所有権が認められる専有部分についての賃借権を有している場合には認められます。
(3)賃借権の譲渡
賃借権の登記は、当該建物に対する賃借権を第三者に対して公示するため、賃借権を登記したことにより賃借権の譲渡が自由にできるようになるのではないかとの懸念をもたれることがあります。
しかし民法第612条は、賃借権の譲渡は賃貸人の承諾を得なければならないと定めており、賃借権の登記をしたからといってそれだけで賃貸人の承諾を得なくとも賃借権の譲渡ができるようになるわけではありません。
(4)特約の登記
賃借権の登記をするに当たって、賃借権の譲渡又は転貸を許容する旨の特約を登記することができます。
このように、賃借権の譲渡又は転貸を許容する特約が登記されている場合には、民法第612条の賃貸人の承諾はあらかじめ包括的に与えられていると判断されますので、賃借人は、賃借権の譲渡又は転貸をなすに当たっては、その都度賃貸人の承諾を得ることなく、自由に行うことが可能になります。
(5)登記上の注意
建物所有を目的とする土地の賃借権と、建物の賃借権は借地借家法の適用を受けることとなります。
借地借家法には強行規定が多数あり、この規定に反して締結された賃貸借契約は登記することができません。
あらたに賃貸借契約を締結してこれを登記する場合は、司法書士が適切なアドバスをさせていただきますのでご相談ください。
八木貴弘司法書士事務所は、相模原を中心に、町田や八王子など関東全域の不動産登記に関する相談を承っております。「賃借権設定をしたいけど自分一人でできない」、「不動産の権利変動が起きたけどどの登記をすればいいかわからない」、「賃借権設定登記の必要書類をまとめたい」「登記手続きを専門家に任せたい」などのお悩みにお応えいたします。
不動産登記にお困りの際は、当事務所までお越し下さい。
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